【Q&A】親の介護が「私ばかり」になっています。兄弟との不公平感はどう整理すればいい?
「親の介護、結局いつも私ばかり」。そう感じて、夜になるとモヤモヤが止まらない方は本当に多いです。兄弟がいるはずなのに、なぜか連絡をするのも、病院に付き添うのも、ケアマネと話すのも自分。たまの帰省で「ありがとう」と言うだけの兄弟を見ていると、感謝より先に怒りがこみ上げてきます。今日は、その「私ばかり」という感覚をひとりで抱え込まないために、背景の整理と、明日から動ける現実的な対処法をまとめました。
Q. 親の介護が私ばかりに集中していて、兄弟への不満が止まりません。どう考えればいいですか?
まず最初にお伝えしたいのは、「私ばかり」という感覚は、あなたの心が狭いから生まれているのではありません。介護の負担が一人に集中する構造には、いくつかの典型的な背景があります。そこを冷静に切り分けると、感情に飲み込まれずに次の一手を考えられるようになります。
「私ばかり」と感じる背景にある3つの構造
多くの相談を見ていると、負担が偏るパターンには共通点があります。一つは「物理的に近い人に集中する」構造です。実家の近くに住んでいる、車で行ける、子どもが手を離れている、といった条件がそろった人のところに、自然と連絡や対応が流れていきます。
もう一つは「最初に動いた人が窓口になる」構造です。最初に病院に付き添ったり、ケアマネと話したりした人が情報のハブになり、兄弟は「あの人に聞けばわかる」と任せきりになります。役割が固定されると、もう自分以外には頼みにくくなるのです。
三つ目が「娘・嫁役割」の刷り込みです。「娘なんだからやって当たり前」「お嫁さんがいるんだから安心」という古い価値観が、本人にも周囲にも残っていて、女性に介護が集中する構図はいまも続いています。厚生労働省の2022年国民生活基礎調査でも、同居の主な介護者は配偶者と子で約4割を占め、その多くが女性という現実があります。
まず取り組みたい「感情の整理」3ステップ
負担を物理的に減らす前に、自分の感情を一度きちんと扱うことが大切です。感情を放置したまま分担の話し合いに入ると、たいてい感情爆発で終わってしまうからです。
1. 怒りや悲しみに「名前」をつける
「私ばかり」の中身は人によって違います。「時間を奪われている怒り」なのか、「お金の負担への不満」なのか、「親に感謝されない寂しさ」なのか。感情を細かく分解すると、対処法が見えてきます。ノートに書き出すだけでも、頭の中の渋滞がほどけていきます。
2. 「公平」ではなく「公正」を目指す
兄弟全員が同じ時間・同じ金額を負担するのは現実には不可能です。住んでいる場所、仕事、子どもの年齢、それぞれ条件が違うからです。だからこそ、まったく同じ「公平」を求めると話し合いが破綻します。状況に応じて役割を割り振る「公正」を目指すと、現実的な分担が見えてきます。たとえば、近くにいる人は通院付き添い、遠方の兄弟は費用負担、というふうにです。
3. 第三者を介在させる
身内だけで話すと、過去の家族関係まで持ち出してこじれがちです。ケアマネジャーや地域包括支援センターの職員に同席してもらうと、感情の応酬になりにくくなります。「専門家から見ても今の分担は無理がある」と言ってもらえるだけで、空気は大きく変わります。
具体的に負担を減らす5つの行動
感情の整理ができたら、次は仕組みを変える番です。一人で抱え続けるのではなく、外に頼る前提で組み直していきましょう。
1つ目は「やっていることをすべて見える化する」ことです。月に何回通院に付き添ったか、買い物は何回行ったか、ケアマネとのやり取りは何分だったか。スマホのメモで構いません。数字で見せられると、兄弟も「自分はほぼ何もしていなかった」と認識せざるを得なくなります。
2つ目は「お金で解決できる部分はお金で解決する」と決めることです。家事代行、配食サービス、介護タクシー、自費の訪問介護など、利用できるサービスは増えています。費用は兄弟で按分する取り決めにすれば、お金を出す兄弟も「役割を果たしている」実感を持てます。
3つ目は「LINEグループなどで情報を全員に共有する」ことです。親の体調や受診結果を全員に同時送信するだけで、「知らなかった」「聞いていない」を防げます。情報をあなただけが持っている状態は、結果的にあなたへの依存を強めます。
4つ目は「介護保険サービスを使い切る」ことです。要介護認定が出ているなら、デイサービス、ショートステイ、訪問介護を組み合わせて、自分の手から離せる時間を意識的に作ります。「親のためにすべて自分でやる」を手放すことが、長く続けるための条件です。
5つ目は「自分の生活を犠牲にする限度を決める」ことです。仕事を辞める、貯金を取り崩す、自分の通院を後回しにする、といった選択は、長期的に必ず自分を追い詰めます。介護は数年から十数年続くことを前提に、自分の人生を残す線引きが必要です。
使える制度を知っておく
知らずに損をしているケースが多いので、最低限おさえておきたい制度を紹介します。
会社員であれば介護休業を、対象家族1人につき通算93日まで、3回に分けて取得できます。雇用保険に加入していれば介護休業給付金として、休業開始時の賃金の67%が支給されます。さらに、年5日まで取得できる介護休暇は時間単位の取得も可能です。2025年4月施行の育児・介護休業法改正で、企業側には介護に直面した社員への個別周知や相談窓口の整備が義務付けられました。「うちの会社は無理」と思い込まず、人事に確認してみてください。
市区町村の地域包括支援センターは、介護のあらゆる相談を無料で受け付けてくれる窓口です。要介護認定の申請、ケアマネ紹介、家族のメンタルケアの相談まで対応しています。「相談する人がいない」と感じているなら、まずここに電話してみることをおすすめします。
それでも兄弟が動かないとき
制度を使い、見える化もして、それでも兄弟が「忙しいから無理」「お前に任せる」を繰り返す場合があります。そのときに覚えておいてほしいのは、「相手を変える」より「自分の関わり方を変える」方が早いという事実です。
たとえば、あなたが対応をやめれば誰かが動かざるを得ません。「来週から3週間、私は対応できません」と宣言して、ショートステイや兄弟に投げ返す勇気が必要なときもあります。冷たいと感じるかもしれませんが、共倒れになるよりずっと健全です。あなたが倒れたら、親も兄弟も困ります。それは利己ではなく、家族全体を守る選択です。
まとめ
今日のあなたが少しでも、肩の力を抜いて眠れますように。
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